中国の「結果的メタ影響力工作」に警戒せよ

細谷雄一の研究室から:中国の影響力工作という深刻な問題
http://blog.livedoor.jp/hosoyayuichi/archives/2000290.html
細谷雄一の研究室から:中国の対日影響力工作という深刻な問題(補足)
http://blog.livedoor.jp/hosoyayuichi/archives/2000334.html
元公安刑事「沖縄で中国スパイは活動している」県民も工作の対象か
https://blogos.com/article/478806/

沖縄のメディアに中国が資金提供をして影響力工作をしている、というアメリカのシンクタンクの報告書が出て物議を醸した。情報提供した日本の学者のコメントが誤解されて、とのことであり、撤回されたが、いろいろな問題を含んでいる。

「中国が沖縄の新聞に資金提供」 報告書の記述撤回 米国シンクタンク戦略国際問題研究所」 | 沖縄タイムス+プラス ニュース | 沖縄タイムス+プラス
https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/621475

「沖縄の新聞に中国資金」 米シンクタンクCSIS報告書に誤り  細谷雄一慶応大教授の発言引用 - 琉球新報 - 沖縄の新聞、地域のニュース
https://ryukyushimpo.jp/news/entry-1178408.html

 

もとより中国が文化活動や教育活動、メディアでの宣伝を通じて自国の優位性や正統性を喧伝し、中国に懸念を示す専門家の活動を阻害しているという指摘がある。

対して日本では、その問題はさほど重視されてこなかった感がある。

ここは酷いシャープパワーですね: 障害報告@webry
https://lm700j.at.webry.info/201802/article_5.html

この行き違いには何があるのだろうか?

 

 

これって確度や公然さの違う複数の事象が同時に存在してるけど、その事象の因果関係とか効果については定かではない、という問題によってもたらされた混乱があると思う。

 

1a.中国は日本国内の沖縄の民族独立活動に対して学術・文化活動として公然と支援をしている
1x.中国は日本国内の沖縄の民族独立活動に対して政治工作として非公然に操作をしている

2a.中国のビジネスマンや留学生が日本の各所で公然と日本人と深い関係を作ろうとしている
2x.中国のビジネスマンや留学生が日本の要所で非公然に情報工作をしている

3a.沖縄のメディアは日本政府やアメリカに対して不信感を持っている
3b.沖縄のメディアは中立を越えて民族活動に共感を寄せている
3c.沖縄のメディアや意志決定層は中国政府や資本を好意的な協力者と思っている
3x.沖縄のメディアや意志決定層は中国政府に動かされている
3y.沖縄の民族独立活動は中国に支配されたメディアや意志決定層が作り出した

4a.中国政府が公的なチャンネルで文化的喧伝をしている
4b.普通の日本国民は中国政府を気味悪がり、中国民族に対しては親近感をあまり持っていない
4c.インテリの日本人は中国政府の政策の”合理性”は認めるが一切信頼していない

 

abcは公然であり確度の高い情報であり、xyは陰謀論に近いで確度が低いか、あるいは工作活動をしていても実を結んでいるかは分からない話である。

 

1aだから1xであるとは限らないし、1xだからといって効果を発揮してるとも限らない。2aは当然のことだろうし、2xもやるだけはやってると思うけど、効果を発揮しているかどうかは分からない。
そもそも4aの活動に対しても4bや4cという背景があるので、あまり影響力工作が作用としているともいえない。
問題はそこで、非公然の影響力工作の対象だといわれることは信頼失墜に繋がるということがある。
今回の事例でいえば1aと2aと3aと3bと3cと4aだからといって3xや3yであるとは限らない。というか疑うのも失礼なとこもあるくらいである。

しかし、中国政府が効果のほどを考えずに1aや2aや4aの影響力工作を続ければ、4bと4cの背景によって影響力工作の対象は日本社会から信頼性を失っていく。おそらく中国政府はこの構造に気付いていないか、あるいは気にしていない可能性が高い。戦狼外交官などと称して外交マナーを無視してイキり倒してる外交官が中国では評価されているあたり、その工作活動についても、工作活動をすることに評価が置かれ、相対的な結果の評価を真面目にやっているとは思えないフシがある。IR汚職だって、たかだか数億とか一企業の利益のために、食い込んでいた成長途中の政治家をつぶしてしまったわけで、これが政府の工作活動だとしたら、流石に世界の情報機関に謝れと思うけどな。

 

結果として影響力工作の存在自体が、メタ的に作用して日本国内での分断を産んでいるわけだ。いわゆる褒め殺し的な感じになっているわけである。その点について、日本の論者は配慮をすべきであるし、例えば沖縄のメディアや意志決定層も工作の対象だと言われている点について危機感を持つべきであろうし、中国関係の人脈から公然・非公然とアプローチはあるわけで、「こういう話があったが常識の範囲の付き合いである」とかは述べてもいいのではと思う。

 

また中国政府におかれましても、孔子学院やTikTokのように各国とも保守政治家は中国に纏わるものを焼いても怒られないどころか拍手喝采になってる状況を鑑み、世界で活動する同朋を守るためにも、もうちょっと品みたいなことは気をつけたほうがよろしいんじゃいんですかね。