「青い眼の近江商人」と「神の国」

ヴォーリズ評伝

ヴォーリズ評伝

けいおん再放送記念でヴォーリズの評伝をば
著者は牧師でかつ近江兄弟社の運営に関わってきた人
奥村直彦 プロフィール - あのひと検索 SPYSEE [スパイシー]
http://spysee.jp/%E5%A5%A5%E6%9D%91%E7%9B%B4%E5%BD%A6/1300118/
なのでキリスト教の理論面からの解説が多い
ヴォーリズって日本に帰化した建築家でしょ」的な評価がある中で、伝道者としてどうだったのかという視点から読み解いていくのは興味深い。あくまでも神の国を目指すピューリタニズム的な伝道者であって、教育・医療・企業など各種の活動も全てはキリスト教的精神からであり、ことさら近江商人の精神とは書いていない。またその「神の国」を作っていくような運動に対しても、その後のキリスト教団からは若干邪道扱いされている。
地元や仏教勢力とはかなり長い間gdgdもめていたところもあって、サナトリウムの墓地を建設する際にも裁判沙汰となっている。都市住民や裕福な成功した商人とは好意的な関係が築けても、農村の普通の住民とはあまりうまくいっていなかったところもあったという。その辺で日本の閉鎖的なムラ社会との対立が見て取れるが、もし僧侶が日本語教師としてアメリカに赴いて伝道して、そんで墓地まで作ろうとすればそりゃとやかく言われるだろうから、ことさら閉鎖性を論難するのもちょっとな、と思う。
ヴォーリズは開戦直前に日本に帰化をするわけだが、当時の外国人と同じく熱烈な皇室ファンとなっていた。その辺も若干批判的に書いているんだよな。またキリスト教がなぜ日本では広まらないのか、という面でも外来宗教の土着化の問題を示している。
結局、ヴォーリズの精神は地域に根付き多くの人の共感を得たが、その中でキリスト教精神は抜け落ちていき「青い眼の近江商人」と言われ、日本の向こう三軒両隣の泥沼の中に消えていく。新快速は来たけど神の国は来なかったのである。青い眼の近江商人、というのはずいぶんな仕打ちなのかもしれない。

あと米メンソレータム本社との関係の話なんだが、3代目の社長になって利益至上主義になって、近江兄弟社はいろいろ締め上げられて経営破綻することに。
ただ、その後経営が傾いた米メンソレータムは、日本でのメンソレータムの権利の譲渡先のロート製薬に買収される。ちょうどイトーヨーカドーセブンイレブンみたいな話だが、著者の書き方には若干メシウマ感が感じられるw
なんか、敬虔なキリスト教徒からは俺ら普通の日本人って、こんな風に見られていたんだ、という意味でも興味深い本だった。

ヴォーリズ評伝: 日本で隣人愛を実践したア ... - 奥村直彦 - Google ブックス
http://books.google.com/books/about/%E3%83%B4%E3%82%A9%E3%83%BC%E3%83%AA%E3%82%BA%E8%A9%95%E4%BC%9D.html?id=qlCmAAAACAAJ
出版社 港の人・MinatoNoHito『ヴォーリズ評伝〜日本で隣人愛を実践したアメリカ人』
http://www.minatonohito.jp/products/046_01.html
ウィリアム・メレル・ヴォーリズのこと - 港の人日記 
http://d.hatena.ne.jp/miasiro/20111026/p1
出版社 港の人・MinatoNoHito『ヴォーリズ評伝〜日本で隣人愛を実践したアメリカ人』
http://www.minatonohito.jp/products/046s_01.html
ヴォーリズ評伝
http://www.shinjuku-shobo.co.jp/new5-15/shohyo/shohyo_data/zsho_332_Voris.html
ヴォーリズ評伝』
http://www20.tok2.com/home/takapan/hon/h_Voriescb.html
試練の2009年、晩夏にヴォーリズの風そよぐ: メメント ド ミニ
http://yukochappy.seesaa.net/article/126362982.html
「アタマの引き出し」は生きるチカラだ!: 「信仰と商売の両立」の実践−”建築家” ヴォーリズ
http://e-satoken.blogspot.com/2009/05/william-merrell-vories-as-architect.html

講師プロフィル(岩原 侑 氏)−未来企業研究会/イズミヤ総研
http://www.izumiya-ri.co.jp/mirai/profile/iwahara.html
こちらは事業に対して惚れた人の書いた評伝である。かなりスタンスとして違いがあるよな