リアル大艦巨砲主義としてのショッピングモール論

大艦巨砲主義、というのをご存じだろうか。
大艦巨砲主義 - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A7%E8%89%A6%E5%B7%A8%E7%A0%B2%E4%B8%BB%E7%BE%A9
さらっというと、軍艦の中で最もでかいジャンルである戦艦ってもんは、デカければデカいほどデカい大砲、つまり飛距離があって威力もある大砲を積める。すると大きさに劣る敵の戦艦の射程範囲外から一方的に攻撃できるので無敵じゃね?という考え方である。1906年のイギリスのドレッドノート超弩級、の由来。「弩」って漢字を当てたやつのセンスの良さの嫉妬w)以来、軍艦建造競争が始まったが、国家財政を蝕み、1921年のワシントン海軍条約でここいらへんでやめにしょうや、ということになって、戦艦建造に制限が加えられた。以後15年にわたってNaval Holidayといわれる競争の休止期を挟み、WW2直前には条約が失効し、戦艦建造競争が始まったが、WW2では航空機の時代でした、というのがまあ通俗的だけど間違ってはいないな理解である・・・と思う。

実際、艦砲での撃ち合いという艦隊決戦の華はなく、潜水艦や航空機が主流となってしまい、戦後もアメリカ海軍は戦艦を後生大事に維持したものの、陸地への艦砲射撃のためのプラットフォームとしてあるから使った、という結末を迎えた。実際、巨大な大砲って数十㌔先に飛ばしても動く目標にそうそう当たるもんでもなく、砲身の耐久性の問題からそうそう気軽に使えるもんでもないので、大艦巨砲主義ってのは幻想だったのかな、ということになった。

じゃあ大艦巨砲主義の構造が通用するもんってないのかな、と思うと、あるんだよな、これが。今のショッピングモール大戦争。デカければデカいほど、新しければ新しいほど強い。しかも過去の店舗の競争力を廃墟化してしまうほどの差が生まれる。

とある街での、いやほんと21世紀になってからおかしい某ハルヒ市のショッピングモールの大戦争の話をしてみたい。
実家は父者のみ免許を持っていて使うのは日曜だけ、冷蔵庫が新旧2台あり、日持ちがしてかさばるものはその週末に大量に買い込んで保存というアメリカンな生活である。あと父者はDIY暇人なのでホームセンターに対しての無限の要求というのもある。その辺の視点に立って、大規模店舗暗黒時代の某ハルヒ市について記憶を呼び起こして書いておく。

あの辺のスーパー事情ってそれまでは抑制的で、他の地域と違って主婦の店のお膝元にも関わらず生協の賀川さんが寡占していた。で、巨大店舗はあまりなく、大字レベル・各停停車駅前レベルの小店舗のみ。いくつか理由があると思われるが、それは大規模な土地を用意できなかったのが一つであろう。まあ空き地ないし、撤退する大工場、というのもこの時はなかった。

もし郊外型の店に行きたいのなら日本の形の島のある池の脇のイズミヤであるとか、R2沿い、あるいは盤滝越えで有馬街道沿い、というのしかなかったような。

ライバルという意味ではスーパーの一個上は芦屋大丸や逆瀬川西武もどきがきの進出での再開発がすでに成功していたこと、そして梅田・三宮にすぐ出られた、ということも大きいだろう。また阪急・阪神は自社の百貨店に客を呼び込むためにあえて出店しなかった。

かくて某ハルヒ市は大規模スーパーの空白地帯となってしまったのだ。その後、荒れ果てていた国鉄駅の南口での再開発が始まった。かくて忘れ去られていた駅に三セク系のショッピングセンター入り多目的ビルができ、生協の賀川さんの大型店舗が入った。生協の賀川さんを中核に専門店街の比率が大きいのが特徴。そして阪神大震災。酒造メーカーの被害は甚大であった。

http://www.nishi.or.jp/homepage/kankyotoshi/report/2006/houkoku2006_01gaikyou.pdf
◇ 工 業
 平成1 6 年工業統計調査結果によると、市内の製造事業所数2 5 2 (4 人以上の事業所)、従業者数10,488 人、製造品出荷額等は約4,550 億円に達しています。飲食料品製造業(食料品および飲料・たばこ・飼料製造業)は、本市の大きな特徴を示すものであり、年間製造品出荷額等で全市の約7 8 %を占めています。また、本市の地場産業である清酒製造業は、平成1 2 年度において、全国の製成高(k l)の約1 1 % を占めています。

で工場を閉めて敷地を売り払ってR2以南にロードサイド型店舗が乱立し始めた。
また地震後に始まった某北口北東の再開発が終了。生協の賀川さんの超巨大店舗完成。虎側も高架工事が終わってしばらくして百貨店が入った。
というわけで一転して市内は商業施設で充実しまくりになって選び放題となった。車で動く場合には行動圏で一番でかいところ新しいところ充実しているところに逝こうとするわけだ。

そして某北口南西の球場跡には西日本最大級のモールが入り、百貨店が中核店舗でかつ駅直結なので近隣から客を吸い上げまくり。よく考えれば今の郊外型の生活を提唱したのはその電鉄会社の経営者である。そりゃ日本の生活スタイルの保守本流が動き出せば、その亜流を田舎に見せびらかしていた某岡田屋涙目である。実際、隣町での某岡田屋の出店計画が一時停止になる衝撃をもたらした。モールで百貨店が入って成功したところというのは結構少ないが、駅近というか電鉄文化圏でないと無理じゃねって気もするね。

そして起こったのは先の国鉄駅の三セク系多目的ビルの瓦解である。徒歩10分の所に生協の賀川さんの自社巨漢店舗ができて客の取り合いになった。結局は市が税金で赤字を穴埋めにして賃料を下げてお値段異常に入ってもらってなんとかしたようだが。

日本有数の人口密集地域であり、鉄道への依存率がある程度ある状況でもご覧の有様である。車でしか動けない地域のモール同士の競争はもっと陰惨である。
滋賀県では2chお買い物板のアイドルのピエリ守山という虫の息モールがあるが
【滋賀】ピエリ守山がこの先生きのこるには?12
http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/shop/1296896099/
運営会社の崩壊も含めて実に味わい深い状況となっている。順繰りで崩壊、というのはもうお約束ではあるよな。

まさに大艦巨砲主義を地でいく時代になってしまったわけである。より大きくより新しいものだけが一方的に勝利を、しかしかりそめにしか過ぎない勝利を納める世界。自然な状態で逝けば当分は競争は止まらないであろう。逆に言えば規制や制限がかかれば止まるということである。中心市街地活性化政策やガソリン高、昨今の金融危機や消費不況は商業施設にNaval Holidayをもたらすであろうか。超大和級アメリカの空母を一方的に粉砕して世界征服して終わり、そういう寒いオチが一番ありそうなのは内緒だが、結局は金融面での耐久力の問題であって、某岡田屋が一方的に勝ち残るもどの店舗の不採算というオチが見えている。

ここは酷いMall Holidayですね 障害報告@webry/ウェブリブログ
http://lm700j.at.webry.info/200811/article_7.html