こんな収益還元法な世の中じゃ。著名で短命な建物に思う

赤プリが消える。
グランドプリンスホテル赤坂 - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B0%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%89%E3%83%97%E3%83%AA%E3%83%B3%E3%82%B9%E3%83%9B%E3%83%86%E3%83%AB%E8%B5%A4%E5%9D%82
40階建ての高層ビルの取り壊しとはまた豪勢な話である。部屋の高さが2.4mと低く、リニューアルでは原稿のホテルには追いつけない。実際にはビジネスホテル的な価格で止まれたらしいが、収益的にもよろしくないことは明白である。さらには窓の割合を増やすためのぎざぎざな断面では床面積が稼げず、オフィスビルへのコンバージョンが不利だったので、建坪率とか容積率の緩和もあるのでとなりの旧館も巻き込んで再開発で、という発想になったのだろう。日経アーキテクチャの記事を読んでみると、関係者が建築家のこだわりを蕩々と述べ無念がっているが、そのこだわりゆえに消えていくのである。まるでジャイアンシチューのように。

近年、著名な建築家が手がけた比較的新しいビルが取り壊される例が多い。

不忍池の脇の奇っ怪なホテルも取り壊され高層マンションへと姿を変えた
平和を乱す 五重塔 (東京都台東区
http://www.st.rim.or.jp/~flui/bk/vol.5/b5.html
ソフィテル東京 - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%BD%E3%83%95%E3%82%A3%E3%83%86%E3%83%AB%E6%9D%B1%E4%BA%AC

御茶ノ水界隈では16年でさようならで外交問題になりかけたり
お茶の水スクエア - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%8A%E8%8C%B6%E3%81%AE%E6%B0%B4%E3%82%B9%E3%82%AF%E3%82%A8%E3%82%A2
日本大学カザルスホール - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E5%A4%A7%E5%AD%A6%E3%82%AB%E3%82%B6%E3%83%AB%E3%82%B9%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%83%AB
こんな低層では、そしてテナント料の入らないホールまであっては、というところである。日本大学だってホールとかだともっと郊外だったらと思うだろうな。

著名な建築家ではないが同じ御茶ノ水界隈ではまだまだ使える日立本社ビルは25年で取り壊された。
定点観測、旧日立本社ビル解体から思うこと | タウンファクトリー
http://townfactory.jp/column/hitachi-teitenn0.html

地代が高い都心においては、建物の価値は収益還元法で判断されるのだろう。また単一の地主で権利関係がはっきりしている土地、というのは何物にも代え難いプレミアムの付いた資産である。ともなれば、高くて四角いビル以外は存在価値はない。
赤プリを追い詰めた新興の外資系ホテルはその辺を非常に割り切っている。最新鋭のビルの最高層10階分で、なんかあったらケツまくって逃げ出せるというか戦略的に撤退できるし、ビルのオーナーはそして空きフロアをオフィスとかに転用をすればいいわけだ。あくまでもテナントとしてやっているわけだしな。
フォーシーズンズ丸の内:25階建て貸しビルの3-7階
ザ・リッツ・カールトン東京:ミッドランドタワーの上と下
シャングリ・ラ ホテル 東京:27F−37F
例外なのはザ・ペニンシュラ東京:丸ごと一棟24階建て ただし建物土地は三菱地所

誰それと誰それの建築は長持ちせんな、とかいう話があるんだけど、こだわりの専用設計のビル、というのは地価の高い都心部においては、その用途で限界までフル回転させない限り求められる高収益を実現できない。なので「その用途」と「フル回転」のどちらもが達成できない限り長生きせんのだ。そんなこんなで著名な建築家が気合いを入れて作った都心のビルは意外と儚いこともある。
逆に田舎の公共施設なんかは別にその辺を突きつめていないので残るんだけどな。ただしメンテがいい加減で利用者に超嫌われる、という展開がお約束である。建築の未来は苦難に満ちているが、それ以前にオーナーの財布が苦難に満ちている。

逆に一度建ててしまった超高層ビルは100年とかあるだろう。新宿副都心の超高層ビルは耐震ダンパーのレトロフィットなども行われて、超長周期地震動などの最新の基準に対しても既存不適格にならないように努力が続けられている。
耐震ネット | 使いながらの超高層ビル耐震バリューアップ
http://www.taisin-net.com/solution/special_issue/87lvn7000000vgv4.html
逆に言えば努力しなければ存在することを許されないってことかもな。いまやクラシックな感じの地下街も含め、後世にあの時代の香りを残しつつも元気にやっていくのだろう。都庁舎のほうは建築家のこだわりのおかげで大規模改修にコストが、という話もあるが。

ゼネコンもそれに応じて高層ビルの解体手法の研究の余念がない。もっとも有名なのは鹿島のカットアンドダウン工法だろう。
鹿島旧本社ビル解体工事
http://www.kajima.co.jp/news/digest/jul_2008/site/site.htm
さすがゼネコン、本社ビルが作るときも壊すときも立派なテストヘッドとしての役割があるようだが、20階建てのビルを30階建てに建て替える意味が今一つぴんと来ないw。本当に超高層ビル取り壊し時代が来て良いのか悩んでしまうところである。

世界最強の都市である東京はこれからも四角いビルがにょろにょろと伸びていく、そんな街になるだろう。都心部はね。郊外は高層マンション以外はまあ立地せんやろうな。郊外の高層ビルで有名なのが東名厚木ICの脇の厚木アクストであるが、業務核都市の構想に従って建てて見るも入居者が少なく経営破綻、値切って満室にしてみたらアクセスのバスがパンクして連接バス導入、というみっともない顛末であった。インターチェンジの脇の高層ビル、という空前絶後の間抜けなプロジェクト、もうないだろうなあ。素直に小田急の脇に新駅込みで建設して、車は車なんだから数百メートルアクセス道路を入ってきてもらえばいいわけでな。

ここは酷い赤プリですね 障害報告@webry/ウェブリブログ
http://lm700j.at.webry.info/201004/article_31.html
ここは酷い高層ビルの末路ですね 障害報告@webry/ウェブリブログ
http://lm700j.at.webry.info/200610/article_21.html
ここは酷い本社の移転ですね 障害報告@webry/ウェブリブログ
http://lm700j.at.webry.info/201001/article_6.html